1.問題の所在
サービス業の簿記においては、売上高を計上するのはサービスを提供した時になります。
決算日前にサービスの提供がすべて終了してしまえばよいのですが、サービス提供の途中で決算日を迎えてしまったような場合、提供中のサービスはどのように仕訳すればよいのか問題となります。
2.決算をまたぐサービスの仕訳
上記の通りサービス業では売上を計上するのはサービスを提供した時ですので、サービスの途中で決算日を迎えた場合には、決算日までに提供したサービスに関する部分だけを抜き出して当期の売上(サービス業の簿記では「役務収益」という勘定科目を使用します)として計上します。
言葉だけではわかりずらいですので、以下の計算・仕訳例で、数字を使ってご説明いたします。
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サービス業の決算時の計算・仕訳例
1.XX簿記学校は簿記2級の講座(全20回)の申込を受け付け、受講者から代金200,000円を前金として現金で受け取った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 200,000 | 前受金 | 200,000 |
簿記検定講座の受講料として、現金200,000円を受け取っていますので「現金 200,000円」を借方(向かって左側)に記帳します。
いっぽう簿記検定講座に関する売上収益の計上は簿記検定講座を実際に行った後になりますので、簿記検定講座が始まる前に受け取った200,000円の現金は前受金となりますので貸方(向かって左側)に「前受金 200,000円」と記帳します。
2.XX簿記学校は簿記2級の講座(全20回)の開講にあたり、講師を外部講師に依頼し、その報酬として現金100,000円を事前に現金で支払った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕掛品 | 100,000 | 現金 | 100,000 |
簿記検定講座の開講に際し、外部講師に報酬としてとして、現金100,000円を支払っていますので「現金 100,000円」を貸方(向かって右側)に記帳します。
いっぽう簿記検定講座に関する売上収益と費用の計上は簿記検定講座を実際に行った時になりますので、簿記検定講座が始まる前に支払った100,000円をすぐに費用として処理するのではなく、いったんこれを「仕掛品」という資産勘定を使って処理することになります。仕掛品は資産グループの勘定科目であり、増加した時にはその増加額を借方(向かって左側)に記帳しますので、左側に「仕掛品 100,000円」と記帳します。
3.XX簿記学校は本日3月31日、決算日を迎えた。上記の簿記講座は全20回の講義のうち、決算日までに12回の講義が終了しているものとした場合の決算日に必要な仕訳を示しなさい(収益・費用は決算日現在の簿記講座の進捗状況に応じて計上すること)。
(考え方)
問題に収益と費用は決算日現在の簿記講座の進捗状況に応じて計上するとありますので、簿記講座20回分の売上高200,000円と事前に支払った費用100,000円を決算日現在の進捗状況で按分し、決算日までに終了した12回分に相当する金額を当期の売上と費用として計上します。
決算までの簿記講座の進捗状況:12回/20回=60%
収益:20回分の前受金200,000円×決算日までの進捗度60%=120,000円
費用:20回分の講師報酬100,000円×決算日までの進捗度60%=60,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
前受金 | 120,000 | 役務収益 | 120,000 |
役務原価 | 60,000 | 仕掛品 | 60,000 |
簿記講座20回のうち、決算日の段階では12回(全体の60%)までが終了しています。したがって、簿記講座全体の収益と費用のうち、60%分を当期の収益や費用として計上することになります。
まず収益に関してですが、サービス業の簿記において売上高の計上は「役務収益」という勘定科目を使いますので、貸方(右側)に「役務収益 120,000円」と記帳します(収益グループの勘定科目は発生した時は貸方に記帳しますので、今回も貸方に発生額を記帳します)。
「役務収益」の相手は事前に受け取っていた「前受金」を減額します(「前受金」は負債勘定ですので、これを借方(左側)に記帳することにより負債(義務)を減額します)。
いっぽう費用については「役務原価」という勘定科目を使って記帳しますので、借方(左側)に「役務原価 60,000円」と記帳します(費用グループの勘定科目は発生した時は借方に記帳しますので、借方に発生額を記帳します)。
「役務原価」の相手は事前に支払った費用を処理していた「仕掛品」を減額します(「仕掛品」は資産勘定ですので、これを貸方(右側)に記帳することにより資産を減少させます)。
(上記の方法のほか、サービスの終了時に一括計上する方法もありますが、当サイトは簿記検定試験を前提としていますので、商工会議所の簿記検定サイト「https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/revision/point/point_08」で公表されている進捗度に応じて収益と原価を計上する方法を解説します)。
(このページと関連するページ)
サービス業の簿記(まとめ)
前受金の仕訳の基礎(サービス業の簿記)
サービス業で費用を事前に支払った時の仕訳(仕掛品)
サービス業で売上を計上した時の仕訳(役務収益・役務原価)