外貨建資産・負債の決算時の換算とは(基本)

1.決算時の換算とは

簿記の外貨建て取引の問題では、外貨で表示された取引価格を日本円に換算して、日本円で仕訳を切ることが基本となります。
ただし、いちど日本円で帳簿に記帳された資産や負債について、決算時などに再度その時点における為替レートを使って再換算してやる必要があるものがあります。
これが外貨建取引の決算時の換算と呼ばれるものです。

2.どのような資産や負債を決算時のレートで換算し直してやる必要があるのか?

では、どのような資産や負債を決算時に再度換算してやる必要があるのでしょうか?
決算時において再度換算する必要がある資産や負債はおもに貨幣性資産・負債と呼ばれるものです。これは簡単に言ってしまえば現金預金のほか、近い将来に現金や預金に変わるものを言います(例えば売掛金という資産は、近い将来に現金や預金によって回収されますので貨幣性資産といえます)。

決算時に換算替えが必要なもの 現金・預金・売掛金・買掛金・貸付金・借入金・受取手形・支払手形・未払金など
決算時に換算替えが不要なもの 棚卸資産・固定資産・前渡金・前受金など

少し難しい話をすると、例えば外貨建ての現金(金庫の中のドル札など)はすぐに日本円に変えることが可能ですが、すぐにあるいは近い将来に日本円に変わるような貨幣性資産・負債は過去の取引発生時点における為替レートで換算した金額よりも決算時現在の為替レートで換算した金額のほうがより適切にその価値をあらわしていると考えられるため、これらの項目は決算時の為替レートで換算しなおしてやることになります。

なお、換算替えなどの問題や参考書などで決算時の為替レートをCR、それに対して取引発生時の為替レートをHRなどと表現することがありますので、この2つの用語は覚えておいてください。

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換算替えの会計処理や仕訳

外貨建ての現金や売掛金など(貨幣性資産・負債)は決算時において、決算時の為替レートで換算しなおしてやることが必要だということはわかりました。
では決算時の換算替えとはどのように処理するのでしょうか、また仕訳はどのように切ればよいのでしょうか。

例えば、商品を100ドルで販売した時(販売時の為替レートは1ドルあたり100円)に受け取ったときの現金100ドルが決算時に会社の金庫に入っていたとしましょう。
この100ドルは自社の商品を100ドルで輸出した際に受け取ったものですが、輸出した時の為替レートが1ドル100円であったため、帳簿には現金10,000円(100ドル×@100円)として記帳しています。

借方 金額 貸方 金額
現金 10,000 売上 10,000

決算時において、為替レートを調べてみたところ1ドルあたり120円となっていました。外貨のまま保有する現金は決算時において換算替えが必要ですので、この現金100ドルも決算時の為替レートで換算しなおしてやる必要があります。この時、現金100ドルを決算時の為替レートで換算すると12,000円(100ドル×@120円)となりますので、帳簿上の現金10,000円を消して新たに現金12,000円を計上しなおしてもよいのですが、帳簿金額10,000円と決算時の価格12,000円との差額である2,000円を新たに現金として計上してやれば結果として現金の帳簿残高は12,000円となりますので、差額だけを計上すればよいことになります。

借方 金額 貸方 金額
現金 2,000 為替差損益 2,000

なお決算時の換算替えで生じた差額(上記でいえば現金の反対側の勘定科目)は為替差損益という損益を表す勘定科目を使って処理することになります。
損益を表す勘定科目は仕訳の際に向かって左側(借方)に出れば費用、向かって右側(貸方)に出れば利益となります。
上記でいえば、為替差損益が向かって右側(貸方)に出ていますので、利益が発生(現金の価値が2,000円増加したことによる利益が発生)したことになります。

上記とは逆に為替レートが1ドルあたり80円となっていた場合には、100ドルの価値は8,000円(100ドル×@80円)であり、手元の現金の価値が2,000円減少したことになりますので次のように仕訳します。

借方 金額 貸方 金額
為替差損益 2,000 現金 2,000

為替差損益という損益勘定が向かって左側に出ておりますので、この場合は手元の現金の価値が2,000円下がって、2,000円の費用(損失)が発生したことを意味しています。

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