外国通貨の仕訳の基礎(取得時・決算時の処理)

外貨建ての通貨(ドル札やユーロ札などの外国通貨)を取得した場合、あるいは決算時の仕訳について基本的な流れを追いながらご説明いたします。

1.外国通貨を取得した時の仕訳

例えば海外の得意先へ商品を販売し、ドル札やユーロ札などの外国通貨を代金を受け取ったとしましょう。
この場合の仕訳も外貨建て取引の仕訳の大前提に従って処理することになります。すなわち、取引価格が外国通貨の単位で表示されている外貨建て取引の仕訳は、その取引の発生時の為替レートを使って外国通貨の取引価格を日本円での取引価格に換算し、日本円で仕訳を行うことになります(外貨建取引発生時の仕訳の基礎(その時の為替レートを使う)もご参照ください)。

設例1:商品を販売し、代金として10ドル札を受け取った。その時の為替レートが1ドル100円であった場合の仕訳を示しなさい。

借方 金額 貸方 金額
現金 1,000 売上 1,000

商品販売の代金として受け取った10ドルは、商品販売時の為替レート1ドル@100円で換算すると次のようになります。

10ドル×@100円=1,000円

したがって、現金1,000円の増加として仕訳することになります。

2.決算時に保有する外国通貨について必要な仕訳

保有する外国通貨は、期中に日本円に両替をしたり、支払手段として利用したりしない限り、外貨のまま決算を迎えることになります。保有している外国通貨は上記の通り取引発生時の為替レートで換算して仕訳し、帳簿に記帳されますので決算時においても取引発生時の為替レートで換算した金額のままとなっているはずです(上記設例の10ドル札を決算まで保有していたとした場合、この10ドルの帳簿上の金額は1,000円のままのはずです)。

しかし、為替レートは日々変動するものですので、決算時において保有する外国通貨の価値(決算日現在の価値)は帳簿に記帳されている価値(過去の取引発生時点の価値)とは異なるはずです。決算で作成する財務諸表では、決算時において会社がどれくらいの資産を持っているのかを正確に読者に伝えなければなりません。したがって外貨で保有する現金についてはこれを決算時の為替レートで換算し、帳簿上の価格を決算時の価値へと修正する必要があります(決算時の換算

設例2:上記設例1で受け取った10ドルを金庫に入れたまま決算を迎えた。決算時の為替レートが1ドル110円であった場合の決算時の仕訳を示しなさい。

借方 金額 貸方 金額
現金 100 為替差損益 100

決算時の為替レートは1ドルあたり@110円です。
この時、保有する10ドル札の価値は次のように算定されます

決算時の10ドル札の価値:10ドル×決算時の為替レート@110円=1,100円

それに対し、もともと帳簿に記帳されている現金10ドルの金額は1,000円となります。したがって、10ドルを決算時のレートで換算し、決算日の価値で計上しなおす際の仕訳は両者の差額100円を追加で現金の増加として計上してやればよいことになります(現金という資産が100円増加していますので、借方に現金100円と記帳します)。

なお、増加した現金勘定の相手側には『為替差損益』という勘定科目を使用します。『為替差損益』とは為替レートの変動を原因として発生した損益を表す勘定科目であり、上記の仕訳では貸方(向かって右)側に『為替差損益 100円』と記帳されることになりますので、現金が100円増加し、100円の収益が発生したことを表すことになります。

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外国通貨の決算時の仕訳についての設例

決算時において保有する10ドル札(帳簿価額は1,000円)について、決算時のドル相場の為替レートを調べたところ1ドルあたり90円となっていた。決算時において必要な仕訳を示しなさい。

(解答)

借方 金額 貸方 金額
為替差損益 100 現金 100

現金の帳簿価額は1,000円ですが、決算時の為替レート(1ドルあたり@90円)で換算しなおすと、決算日現在の現金10ドルの価値は次のようになります。

10ドル×決算時の為替レート@90円=900円

決算時の10ドル札の価値は帳簿に記帳されている価値と比較して100円少なくなっていますので、現金100円の減少ととらえて貸方に『現金 100円』と仕訳します。その反対側(借方)には『為替差損益 100円』と記帳します。これにより、資産が100円減少し、100円の費用(損失)が発生したことを記帳することができます。

(このページと関連するページ)
外貨建資産・負債の決算時の換算とは(基本)

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