満期保有目的債券の決算時の仕訳(償却原価法の基礎)

満期保有目的の債券を取得した時は、その取得時に支払った金額(取得価額)を使って仕訳します。
たとえば、現金9,500円で社債(満期保有目的債券)を購入した時は次のように記帳します。

借方 金額 貸方 金額
満期保有目的債券 9,500 現金 9,500

満期保有目的債券は満期日(社債の返済日)まで保有する目的で購入した債券ですから、保有期間中にその債券の時価が変動しても、保有しているものにとっては意味はありませんので、通常は決算などにおいて時価評価などの評価替えは行わず、取得原価のままで満期日まで計上しておきます。

ただし社債の取得価額と額面金額が異なる場合において、この差額が金利調整差額と認められる場合には、償却原価法という方法を使い、決算時などにおいて社債の帳簿価額を調整する必要があります(難しい言葉が多いですが、とりあえずは、金利調整差額という言葉が問題文などで出てきた場合には償却原価法を使う必要があると認識できるようにしておいてください)。

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満期保有目的債券に償却原価法を適用した場合の計算例と仕訳

償却原価法は債券の取得価額と額面金額とが異なる場合において、その差額を債券の取得日から満期日までの期間に配分していく方法です。言葉だけで理解するのは難しいですので、数値例を使って理解していきましょう。

たとえば、上記の9,500円で取得した社債の額面金額が10,000円、取得日から満期日までの期間が5年であったとします。償却原価法はこの差額(500円)を取得日から満期日までの期間(5年間)に配分していく方法ですので、配分額は次のように計算し、これを5年間にわたって配分していきます

毎年の配分額:差額500円÷5年=100円

1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
配分額 100円 100円 100円 100円 100円

償却原価法は債券の取得価額と額面金額との差額を、その債券の取得日から満期日までの期間に配分していく方法です。上記の例でいえば、社債(債券)の取得価額と額面金額との差額は500円であり、これを取得日から満期日までの期間5年間にわたって配分していきますので、1年あたりの配分額は500円÷5年=100円となります。
この配分された金額は各期の決算時などにおいて「満期保有目的債券」の帳簿価額に加算していきます。
上記の例でいえば、満期保有目的債券を取得して1年後の決算時には次のように仕訳し、「満期保有目的債券」の帳簿価額に100円を加算し、帳簿価額(最初は9,500円)を額面金額(10,000円)に近づけていきます。

借方 金額 貸方 金額
満期保有目的債券 100 有価証券利息 100

満期保有目的債券は資産の勘定科目ですので、向かって左側(借方)は増加となります。したがって、1年目の決算時に左側に「満期保有目的債券 100円」と記帳することにより、満期保有目的債券の帳簿価額は9,600円(=取得時9,500円+1年目の調整100円)となり、当初より額面金額10,000円に近付いたことになります。これを5年繰り返せば、満期保有目的債券の帳簿価額は10,000円となり額面金額と一致します。
後はこの10,000円を満期日に発行会社から返してもらうだけです。

いっぽう、仕訳の右側(貸方)は「有価証券利息」という収益の勘定を使います。この差額は金利調整差額であり金利の性格があると考えられるため「有価証券利息」という利息の勘定を使って記帳し、これを収益として計上します。

最後になりますが、上記の償却原価法の調整額の算定式を確認しますと、取得価額と額面金額との差額を取得日から満期日までの期間で按分し、各期に同額の金額を配分していることが分かります。これは償却原価法のうち定額法と呼ばれる方法です。
なお、上記では理解のため差額を年数で割っていますが、実際には月割計算が必要となりますので、以下のように求める必要があります(特に年度の途中で社債を購入した時には注意が必要です)

各期の調整額=(額面金額-取得価額)×当期の月数/取得時から満期日までの月数

償却原価法には上記の「定額法」のほかに「利息法」と呼ばれるものがあります。日商簿記検定の1級では利息法の適用が指示される場合もありますので、1級以上の試験問題ではいずれの方法を採用する必要があるのか、問題文から読み取る必要があります。

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