減価償却費超過額と税効果会計について基本的な考え方

減価償却費の計算は税務上は厳格に償却方法や耐用年数が定められており、これらの決まりに従って算定された償却限度額までしか損金(税務上の経費)に算入することができません。
したがって会計上の減価償却費の額がこの税務上の減価償却費の償却限度額を超えると会計上の経費と税務上の損金との間に差(一時差異)が生じることになります。
この税務上の減価償却費の限度額を超える一時差異の金額を減価償却超過額といい、税効果会計に関する仕訳が必要となります。

例えば会計上は減価償却費1,000円を計上した場合において、税務上の償却限度超過額が600円であった場合、差額の400円が税務と会計との差額となります(一時差異)。ここではこのような前提のもとでも税効果会計の適用を考えていきます(法人税の実行税率を40%とします)。
まず減価償却費1,000円の仕訳を示すと以下のようになります。

借方 金額 貸方 金額
減価償却費 1,000 備品など 1,000

会計上経費として処理した金額のうち400円が税務上損金として認められないことにより、会計上の法人税は税務上の法人税の額より、400円に法人税の実効税率40%を乗じた160円だけ小さくなるはずです(会計上の方が経費が大きい→利益が小さい→税金も小さい)。

会計上の経費 > 税務上の損金

会計上の利益 < 税務上の利益

会計上の税金 < 税務上の税金

したがって税効果会計の適用を考える場合、160円だけ法人税を小さくするための調整を行います。法人税は会社にとってはお金が出ていきますので費用と考えることができ、借方に「法人税等」という勘定科目で記帳します。ここではこの法人税を小さくする方向の調整を入れますので、借方の「法人税等」とは反対側の貸方に「法人税等調整額という科目で160円を計上します。
貸方(向かって右側)に計上した「法人税等調整額」の相手勘定は「繰延税金資産」となります。
仕訳を示すと以下のようになります。

減価償却費の損金不算入額400円×法人税の税率40%=160円(一時差異)

借方 金額 貸方 金額
減価償却費 1,000 備品など 1,000
繰延税金資産 160 法人税等調整額 160

減価償却超過額についての税効果会計の仕訳は上記のカタチで覚えてしまって構いません(減価償却費の反対側に法人税等調整額)。金額のところに一時差異×法人税の実効税率を入れてください。
固定資産を売却や除却するなどして差異が解消した際には、税効果会計適用時の反対仕訳を行い、繰延税金資産を減額します。

借方 金額 貸方 金額
法人税等調整額 160 繰延税金資産 160

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減価償却超過額にかかる税効果会計適用時の仕訳例

当期首に取得した車両運搬具100,000円について、弊社では当該車両の使用状況から初年度に60,000円の減価償却費を計上した。
なお車両運搬具の税務上の耐用年数は6年であり、定率法(耐用年数6年の場合の償却率は0.333)により償却する必要がある。この場合、法人税の実効税率を40%として税効果会計を適用した場合の仕訳を示しなさい。

(解説・解答)
会社は当期首に100,000円で取得した車両運搬具の減価償却費として、当年度に60,000円の減価償却費を計上していますが、税務上の減価償却費の限度額は以下の通り33,300円であり、26,700円だけ減価償却費の限度額を超過しています。

税務上の減価償却費限度額:取得原価100,000円×償却率0.333=33,300円

減価償却超過額:会社の計上した償却費60,000円-減価償却費の限度額33,300円=26,700円

したがって会社の計上した減価償却費(会計上の減価償却費)60,000円と減価償却費の限度額(税務上の減価償却費)33,300円との差額である26,700円(一時差異)にたいし、法人税の調整を行います。
法人税の実効税率は40%ですので、実際に要請を行う金額は一時差異26,700円に40%を乗じた10,680円となります。

法人税等調整額:一時差異26,700円×法人税等実効税率40%=10,680円

減価償却費超過額に関する税効果会計適用時の仕訳は、減価償却費(借方)の反対側である貸方に「法人税等調整額」を計上します。減価償却費計上時の仕訳一緒に示すと以下のようになります。また貸方に計上された法人税等調整額の相手勘定は「繰延税金資産」となります。

借方 金額 貸方 金額
減価償却費 60,000 車両運搬具 60,000
繰延税金資産 10,680 法人税等調整額 10,680

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