取引発生後に為替予約をした時の基本的な流れ(振当処理の場合)

仕入取引や売上取引をドルやユーロなどの外貨でを行う(外貨建取引)に際し、為替相場の変動によるリスク(為替相場の変動により追加の損益が発生してしまうかもしれない可能性)を排除するため、代金決済時の為替レートをあらかじめ決めてしまう為替予約を行うことがあります。

為替予約は取引時(商品の売上や仕入と同時)に行うこともありますが、取引の後に行うこともあります。
このページでは輸出や輸入などの商品売買取引を行った後で為替予約を行ったときの仕訳を具体例を使いながら説明いたします(取引発生と同時に為替予約を付した時の仕訳は為替予約の基礎(振当処理とは)をご参照ください)。

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取引発生後に為替予約を付した時の流れ(振当処理)

1.取引発生時の処理

×1年4月1日、海外の取引先へ商品を100ドルで販売した(商品販売時点の為替レートは1ドル100円)。なお代金は3か月後の×1年6月30日に現金で受け取ることになっている。この場合の取引発生時の仕訳を示しなさい。

売掛金:100ドル×@100円=10,000円

借方 金額 貸方 金額
売掛金 10,000 売上 10,000

(考え方)
外貨建取引(商品の販売)を行っていますが、まだこの時点では為替予約は行っておりませんので外貨建て取引の換算は商品売買時の為替レート(直物為替レート)である1ドル@100円で換算を行って仕訳することになります。

2.取引発生後に為替予約を付した時の処理

×1年5月1日、為替相場の変動による追加の損益が発生するリスクを回避するため、上記の売掛金100ドルについて為替予約を行うこととした。なお為替予約を行う際の予約レートは1ドルあたり@95円、5月1日現在の為替レートは1ドル@98円であるものとする。

a.売掛金(予約レート):100ドル×@95円=9,500円
b.売掛金(帳簿価額):10,000円(上記1の通り)
c.為替差損益:予約レートでの換算額9,500円-帳簿価額10,000円=△500円(為替差損)

借方 金額 貸方 金額
為替差損益 500 売掛金 500

(考え方)
取引発生後に売掛金や買掛金などに為替予約を付した場合は、売掛金や買掛金を為替予約を付した時点における予約レート(先物為替相場ということもあります)を使った金額に換算替え(評価替え)いたします。
ここでは5月1日に為替予約を付しておりますので、5月1日の予約レートを使って売掛金100ドルを換算します。

a.売掛金(予約レート):100ドル×@95円=9,500円

売掛金の帳簿価額を9,500円にするのですが、この為替予約を付した売掛金100ドルは取引の発生時にその時点における為替レート1ドル@100円(直物為替相場ということもあります)で換算して仕訳していますので帳簿価額は以下のようになっているはずです。

b.売掛金(帳簿価額):100ドル×@100=10,000円

したがって両者の差額だけ差引のための仕訳をきれば帳簿価額を10,000円(もともとの帳簿価額)から9,500円(予約レートで換算した価額)へと修正できるはずです。
両者の差額は

c.予約レートで換算した金額9,500円-もともとの帳簿価額10,000円=△500円

となります(売掛金が10,000円から9,500円へと減っていいますので損失が発生しています。したがってこの500円は為替差損益の借方(費用・損失側)として処理します)。

3.代金を決済した時の処理

×1年6月30日に売掛金100ドルを現金で受け取った、なお6月30日時点における為替レートは1ドルあたり90円であった。

売掛金:100ドル×@95円(為替予約時の予約レート)=9,500円

借方 金額 貸方 金額
現金 9,500 売掛金 9,500

(考え方)
代金100ドルは事前に為替予約した時の予約レート(1ドルあたり@95円)で換算した金額を受け取ることができます。
また売掛金100ドルは上記2ですでに予約レートを使って換算した金額に修正されています。
したがって帳簿上の売掛金9,500円(100ドル×@95円)を決済するための仕訳を切ればよいだけとなります。

なお、このページでは日商簿記検定2級での試験範囲(為替予約差額は期間配分は行わない処理)を前提に取引発生後の為替予約についてご説明しております。
日商簿記検定1級やその他の資格試験を受験する際は十分にご注意ください。

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