為替予約の基礎(振当処理とは)

外貨建取引では、取引発生時点から代金の決済時までの間に為替レートが変動することにより、追加の損益が発生することがあります。

例えば、海外の取引先へ商品を100ドルで輸出したとします(輸出時点の為替レートは1ドル100円)。なお代金は3か月後に現金で受け取ることになっている場合、この時点における売掛金の日本円での価値と取引発生時における仕訳は次のようになります。

売掛金:100ドル×@100円=10,000円

借方 金額 貸方 金額
売掛金 10,000 売上 10,000

3か月後に代金として100ドルを現金で受け取ってすぐに日本円に両替したとします。この時の為替レートが1ドル95円であった場合、受け取った現金の日本円での価値と代金受け取り時の仕訳は次のようになります。

現金100ドル×@95円=9,500円

借方 金額 貸方 金額
現金 9,500 売掛金 10,000
為替差損益 500

この取引では、取引の発生時点において売上(売掛金)100ドルの価値は10,000円でしたが、取引発生時点から代金の受け取り時点までの間に為替相場が変動したことによって、実際に現金として受け取った金額は9,500円でした。

この取引による収益は結果として売上高10,000円-為替差損益500円=9,500円ですが、これは取引が終わって(現金を受け取って)初めてわかる金額であり、取引の開始時点においては、この取引による収益は全体としていくらになるかわからないことになります。
商品の取引を行う立場にとっては、実際に代金の決済が行われるまで取引の損益がわからない(為替レートは大幅に変動すれば損失が出てしまうかもしれない)不安定な取引はできればしたくはありません。

そこで外貨建て取引をする企業は代金を決済する時点の為替レートをあらかじめ決めておいて(取引発生時に将来代金を決済するときのレートを予約しておきます)、このような損益の不安点な状態を回避することがあります。
これを為替予約(かわせよやく)といいます。

では、為替予約のうち日商簿記検定2級の試験範囲に含まれている振当処理について、商品売買取引と同時に為替予約を付した場合を例にとって具体的な処理方法を見ていきましょう。

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振当処理の基本形(取引発生と同時に為替予約を付した場合の処理)

例題1:A社は海外の取引先へ商品を100ドルで輸出した(輸出時点の為替レートは1ドル100円)。なお代金は3か月後に現金で受け取ることになっているが、、A社は為替相場の変動により追加的な損益が発生するリスクを回避するため、商品の販売と同時に予約レート1ドル105円で為替予約を行った。この場合の商品販売時の仕訳を示しなさい(為替予約の処理は振当処理によるものとする)。

(解答・解説)
まず、ドル建ての取引価格を日本円に換算する必要がありますが、取引発生時点までに為替予約を付した場合は、取引価格(売上および売掛金の両方)をそのまま予約レートを使って換算します。

売掛金:100ドル×予約レート@105円=10,500円

借方 金額 貸方 金額
売掛金 10,500 売上 10,500

為替予約とは、将来の為替相場の変動により追加的な損益が発生することを回避するために、将来の代金の決済時点の為替相場をあらかじめ事前に決定(予約)しておくことを言います。したがって将来代金を決済する際のレートがすでに分かっていいますので、最初から取引全体をこのレートを使って換算してやれば追加の損益や処理も必要ないことになります。
取引発生時までに為替予約を付した場合には、最初から外貨建取引全体(売上と売掛金の両方)に為替予約した予約レートを使って換算することになります(最初から取引価格に予約レートを振り当てるため、振当処理といいます)。

例題2:上記の商品売買取引の代金を3か月後に100ドルを現金で受け取った。なお時の為替レートが1ドル95円であった場合の仕訳を示しなさい。

(解答・解説)
事前に予約レート@105円で為替予約をしているため、100ドルを1ドルあたり105円で換算します

現金100ドル×@105円=10,500円

借方 金額 貸方 金額
現金 10,500 売掛金 10,500

この取引では事前に予約レート@105円で為替予約をしているため、代金100ドルは現在の実際の為替レートにかかわらず、1ドル105円で交換してもらえます。
したがって受け取った現金100ドルも予約レート105円で換算するため、為替予約以後の為替レートの変動による損益を計上する必要はありません。

なお、商品を販売した日(為替予約時)から代金を決済するまでの間に決算日をまたいだ場合であっても、振当処理を行っている場合には特に必要な処理はございません。
取引発生時までに為替予約を付した場合において、取引発生日・決算日・代金決済日にそれぞれ使用する為替レートとの関係は以下のようになります。

1.取引発生日:外貨での売掛金または買掛金×予約レート
2.決算日:外貨での売掛金または買掛金×予約レート
3.外貨での売掛金または買掛金×予約レート

使用する為替レートはすべて予約レートのため、換算替えや為替相場が変動したことによる損益である為替差損益は計上する必要がありません。

(このページと関連するページ)
為替予約後の決算時の処理(振当処理の場合)
取引発生後に為替予約をした時の基本的な流れ(振当処理の場合)

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