引当金の基本的な考え方と仕訳の方法

このページでは引当金の基本的な考え方と仕訳の仕組みについて、ごく簡単にご説明しております。まず引当金の基本的な考え方を説明するに際してごく簡単な具体例を設定します。

例えば本社建物を3年後ごとに修繕している会社があるとします(×3年、×6年、×9年など)。この修繕には1回あたり約3万円の出費がみこまれていますが、この3万円はいつの経費にすればよいでしょう?

まず実際に修繕を行った年に3万円全額を経費にするという考え方があります。この考え方のもとでは実際に修繕を行う×3年、×6年など3年ごとに3万円の修繕費という経費を計上します。この会社の売上が毎年2万円で経費はこの修繕費以外にないものとしたときの×1年から×3年までの損益はつぎのようになります。

×1年 ×2年 ×3年
売上高 20,000円 20,000円 20,000円
経費 0円 0円 30,000円
利益 20,000円 20,000円 -10,000円

上記のように実際に払った年の経費とするという考えは帳簿をつける立場からは確かにわかりやすい方法ではあります。
しかし、修繕が必要となる原因である本社建物の劣化は×3年に突然発生するわけではなく、×1年から×3年を通して継続的に発生しているはずです。
であるとすれば、×3年に3万円全額を経費として計上するのではく、×1年から×3年を通してすこしずつ各年度に分けて経費として計上するほうが適切であると考えられます。

上記の例でいえば、×3年に3万円を経費として計上するのではく×1年から×3年にかけて1万円ずつ計上するほうが修繕費が必要となる原因の発生に即した処理であるともいえます。

×1年 ×2年 ×3年
売上高 20,000円 20,000円 20,000円
経費 10,000円 10,000円 10,000円
利益 10,000円 10,000円 10,000円

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引当金の計上時の仕訳

では、×1年と×2年にも10,000円ずつ経費を計上するとしても、実際にお金を払うのは×3年ですのでどのように処理すればよいでしょうか。
×1年に10,000円の経費を計上する際の仕訳を考えてみます。まず10,000円の経費を計上するので仕訳の借方(向かって左)には経費10,000円を計上することになるはずです。

借方 金額 貸方 金額
経費 10,000

では、貸方(向かって右側)はどのようにすればよいでしょう。現金を払っていれば「現金10,000円」とすればよいのですが、この設例の場合、現金を支払うのは2年後の×3年となっており、×1年の段階では現金の支払いはありません。

ここで、将来の支出に備えるための勘定科目である「引当金」という勘定科目が登場します。
少し会計的な言い方をすれば,引当金とは「将来の支出のうち、当期の負担に属する金額を費用・損失として計上するさいに設定される貸方勘定」ということができます。つまり×3年に予想される出費のうち、×1年の負担に属すると考えられる金額を×1年に費用として計上するにさいし、借方に計上される費用の相手として設定される貸方の勘定科目が引当金となります(会計的な用語や説明がわかりずらい場合は、将来の支出に備えるための積立金のようなものを考えてください)。

上記の仕訳で借方に「経費 10,000円」を計上するさい、貸方に「引当金」を設定すると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
経費
(修繕引当金繰入)
10,000 引当金
(修繕引当金)
10,000

なお×2年も同様に引当金を設定しますので、×2年にも同様の仕訳が必要となります。

借方 金額 貸方 金額
経費
(修繕引当金繰入)
10,000 引当金
(修繕引当金)
10,000

修繕の際に引当金を設定するときは、「修繕引当金繰入」という費用勘定と「修繕引当金」という引当金勘定とを使用します。
この引当金は積立金のようなものですので、実際の修繕があった場合にはこの引当金(将来の修繕のために積み立てた積立金)の取り崩しを行います
したがって×3年の修繕を行い現金30,000円を支払った場合には次のように引当金の残高(×1年と×2年の引当金計上額の合計20,000円)を引当金を設定した時とは反対側の借方に記帳して修繕引当金の取り崩しをおこない、引当金の残高だけでは足りない金額について×3年の経費(修繕費)として処理することになります。

借方 金額 貸方 金額
修繕費 10,000 現金 30,000
修繕引当金 20,000

これらの仕訳により×1年と×2年に「修繕引当金繰入10,000円」、×3年に「修繕費10,000円」という経費が計上され、修繕にかかった30,000円を×1年から×3年にかけて分担させることができるようになります。

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