株主(投資家)は、株式会社にお金を出資することにより、会社の重要な意思決定の場(株主総会)に参加したり、会社の獲得した利益の分配を受け取ることができます。
会社は出資してくれた株主に対し、その見返りとして、会社の事業活動によって獲得した利益の一部を株主に対し分配することになりますが、株主に利益を分配することを剰余金の配当といいます。
ただし剰余金の配当を行う場合には、会社法という法律によって一定の制限が設けられています。剰余金の配当を無制限に認めた場合、会社からお金がどんどん流出し、会社に対しお金を貸している債権者や従業員などが不利益を被る恐れがため、これを防止するためです。
会社法という法律では、会社が株主に配当金を支払う場合には、利益準備金と資本準備金の合計額が資本金の4分の1になるまで、支払う配当金の10分の1を利益準備金として積み立てなければならないと規定されています(会社法第445条第4項)。
すなわち、配当金を支払う場合には次のうちいずれか小さい方の金額を利益準備金として積み立てる必要があります。
1.資本金×1/4-(資本準備金+利益準備金) 2.配当金の支払額×1/10 |
では、下記の具体例を使って、配当金支払時に積み立てなければならない利益準備金の計算をご確認ください。
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利益準備金積立額の計算
株主総会において株主に100,000円の配当を支払う(剰余金の配当する)ことが決定された。
利益準備金の積み立ては会社法の規定する要積立額であるものとした場合、株主総会時において必要な仕訳を示しなさい。
(なお利益準備金積立前の当社の純資産の内訳は、資本金500,000円、資本準備金40,000円、利益準備金40,000円であるものとする)。
(計算)
株主に配当金を支払う際において必要な利益準備金の積立額は以下の算式のうち、いずれか小さい方の金額となります
1.資本金500,000円×1/4-(資本準備金40,000円+利益準備金40,000円)=45,000円
2.配当金100,000円×1/10=10,000円
計算の結果、2の方が小さいですので、配当金を支払う際に必要な利益準備金の積立額は10,000円となります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
繰越利益剰余金 | 110,000 | 未払配当金 | 100,000 |
利益準備金 | 10,000 |
株主総会決議により、100,000円を株主に配当金として支払い、10,000円利益準備金として積み立てることが決定されていますので、その合計金額である110,000円を左側(借方)に「繰越利益剰余金110,000円」と記入してください。
また株主総会決議により、株主に対し100,000円を支払わなければならない義務が発生しますので貸方(右側)に「未払配当金100,000円」と記入し、負債が発生したことを記帳します。
また、あらたに利益準備金(純資産)を10,000円積み立てていますので貸方に「利益準備金10,000円」と記入することになります。
(このページと関連するページ)
剰余金の配当時の会計処理(未払配当金計上時の仕訳)
剰余金の配当時の会計処理(配当金支払時の仕訳)
別途積立金の積み立てた時の仕訳の基礎