市場価格のない株式の減損処理の仕訳の基礎

時価を把握することが極めて困難と認められる株式(市場価格のない株式)は、通常は決算時に時価評価は行いませんので、決算時には特に評価替えに関する処理は必要ありませんが(詳細は時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券の仕訳をご参照ください)、市場価格のない株式であっても例外的に評価替えが必要となる場合があります。

市場価格のない株式であっても例外的に評価替えが必要となる場合とは、当該株式の発行会社の財政状態が悪化し、発行した株式の実質価額が著しく下落した場合(たとえば、発行会社の純資産額を発行株式数で割った1株当たりの純資産額が取得原価より50%以上下落した時など)をいい、この場合には株式の帳簿価額(取得原価)を1株当たりの純資産額(これを実質価額といいます)まで引き下げ、評価差額についてはその期の損益として処理することになります。これを有価証券の減損処理といいます。

したがって、試験問題(日商簿記検定では特に1級以上の場合)などで有価証券の評価を問う問題においては、たとえ市場価格のない株式であったとしても、以下のキーワードの有無に注意し、もしこれらのキーワードが問題文にある場合は減損処理の必要性を検討することが必要となります。

1.発行会社の財政状態の悪化
2.実質価額が著しく低下

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市場価格のない株式の減損処理の仕訳例

前期以前に1株100円で取得した浜田工業の株式100株(その他有価証券であり、時価は不明)について、浜田工業の財政状態が著しく悪化しているため、株式評価の引き下げ及び評価損の計上が必要であると考えられる。以下の資料を基に、浜田工業の株式について決算時に必要な仕訳を示しなさい。

浜田工業の決算時における財政状態:資産400,000円 負債320,000円
浜田工業の発行済み株式数:2,000株

(計算過程)
1株当たりの純資産額:(資産400,000円-負債320,000円)÷発行済み株式2,000株=@40円
評価損:取得原価(@100円×100株)-実質価額(@40円×100株)=6,000円

借方 金額 貸方 金額
投資有価証券評価損 6,000 その他有価証券 6,000

通常の場合、市場価格のない株式は決算時に時価への評価替えは行いませんが、発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく下落したと認められる場合には、実質価額への評価額の引き下げと評価差額の損失計上を行うことが必要となります(減損処理)。

なお評価差額については、当該実質価額をもって翌期以降の取得原価とするため切放し法で処理し、評価差額を再び取得原価に振り戻す処理は行いません

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時価のある有価証券の減損処理の仕訳の基礎

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