収益の繰延の基礎(決算整理仕訳)

土地や建物を他人に貸した時の家賃や各種の受取手数料・メンテナンス料などの収益は、受取った時ではなく、実際にサービスを提供した期間の収益となります。サービスを提供した時などに同時に代金を受取っているような場合であれば特に問題はないのですが、例えば1年分の家賃や手数料などを前受けした場合、決算時において受取った金額のうち、未だにサービスを提供していない部分に対応する金額を収益から削除するための調整が必要となる場合があります。

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収益を前受けした時の決算時の調整-収益の繰延処理

ここで3月31日決算の会社が11月1日に他人に自社ビルの余剰スペースを賃貸し、1年分の家賃12,000円を前受けした時を考えてみましょう。
家賃を受取った時は受取家賃などの勘定を使って受取時の収益として記帳します。

借方 金額 貸方 金額
現金など 12,000 受取家賃 12,000

上記の受取家賃は今年度の11月から翌年度の10月までの1年分(12か月分)の家賃となります。しかしこの会社の決算日は3月31日ですので、今年度に事務所を貸すというサービスの提供を行うのは11月から3月までの5か月分のみとなります。それ以降の7か月分は決算日以降の期間(翌期)にサービスを提供することになります。

このように、本来であれば翌期以降の期間に対応する収益の代金を当期に前受けした時は、決算日において翌期以降の期間に対応する部分を当期の収益から差し引く必要があります。上記の場合、事前に受け取った1年分の家賃のうち7か月分は翌期の収益となりますので以下のように処理します。

借方 金額 貸方 金額
受取家賃 7,000 前受収益 7,000

11月1日に受け取った1年分の家賃のうち、翌期以降(4月から10月までの7か月分)の期間に対応する家賃は以下のように求めます。

12,000円(1年分の家賃)×7か月/12か月=7,000円

この7,000円は本来であれが当期の収益ではありませんので、受取家賃の借方に7,000円と記入することにより、当期の受取家賃から減額します。いっぽう、この7,000円は翌期以降に事務所を貸してあげなければならない義務を表しますので、前受収益という負債勘定の貸方に記入し、負債(義務)として翌期に繰り越すこととなります。

上記のように当期に受取った金額のうち、翌期以降の期間に対応するする収益を当期の収益からマイナスし、負債として翌期に繰り越すことを収益の繰延といいます(前受収益のように、収益や費用を発生した期間に正しく振り分けるために決算時に計上される負債や資産は経過勘定項目ともいいます)。
なお繰り延べられた収益は翌期の期首に反対仕訳をし、翌期の収益にプラスします。

借方 金額 貸方 金額
前受収益 7,000 受取家賃 7,000

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